こんにちは!
気象予報士・お天気キャスターの小林正寿です。
さて、きょう12月2日は、2019年の新語・流行語大賞が発表され、その大賞に輝いたのは、『ONE TEAM』。ラグビーワールドカップで見事8強に輝いた、日本代表のスローガンです。
この記事では、新語・流行語大賞を入り口に、2019年の天気界の新語・流行語を自分なりに考えつつ、2019年の天気を振り返ってみようと思います。そして、実は、天気界にも『ONE TEAM』があります。
新語・流行語対象は『ONE TEAM』
『ONE TEAM』。
ラグビー日本代表を率いるジェイミー・ジョセフヘッドコーチが掲げたテーマ。
ジョセフコーチは、最強のチームを作るために、7ヶ国15人の海外出身選手を含む31人を代表選手に選んだ。
ただ、どんな強い選手たちの集団であろうと、選手たちの思いや心がひとつにならなければ、強いチームにはならない、チームとして機能しない。
そこで掲げたテーマが『ONE TEAM』。
チームが一丸となる、みんなの思いや心をひとつにして戦うという意味。
そのテーマ通り、ラグビー日本代表は『ONE TEAM』となって快進撃を見せてくれ、見事8強まで勝ち進みました。
僕の周りにはラグビーをしている友人が多かったので、ラグビーはわりと身近なスポーツではありましたが、今回のワールドカップを機に、ラグビーに興味を持った方々も多かったのではないでしょうか。
ラグビーはご存知のように大人数のスポーツのため、チームの人数不足に悩まされているチームも多いです。
僕の地元、茨城県でも、合同チームでの大会出場となっている高校も多いように思います。
ラグビーを始めるこどもたちが増えて、ラグビー界がさらに盛り上がるといいなと思っています。
天気界の『ONE TEAM』は恐ろしい
さて、新語・流行語大賞が決まったということは、早いものでもう年末ですね。
※この記事を書いているのは、2019年12月2日です。
ということで、2019年の天気を振り返っていきたいと思います。
実は、天気界にも『ONE TEAM』があります。
あります、と書いておきながら正式な用語ではなく、僕がラグビーワールドカップを見ていた時に、「あ、天気界にもONE TEAMがあるな」とふと思っただけです。
2019年は、天気界の『ONE TEAM』が目立つ存在だったと思います。
ただ、ラグビー日本代表と違って、天気界の『ONE TEAM』は恐ろしいもの。
それは何かというと、『積乱雲のONE TEAM』です。
台風は積乱雲の大集団。
活動が活発な前線は、積乱雲の大行列。
つまり、どちらもひとつひとつの積乱雲が『ONE TEAM』になっているのです。
ひとつひとつの積乱雲の寿命はせいぜい30分~1時間ほどなのですが、『ONE TEAM』になり力を合わせてしまうと、何時間も大雨が続くことになります。
2019年を振り返ると、夏には台風や活動が活発な前線による大雨で、九州北部に大雨特別警報が発表されました。
また、秋は、千葉県を中心に記録的な暴風が吹き荒れ住宅などに大きな爪痕を残した台風15号の襲来、
静岡県と関東甲信、東北地方の広い範囲に大雨特別警報が発表され、大きな河川の氾濫など甚大な被害をもたらした台風19号の襲来が、記憶に新しいです。
原因は違えど、いずれも積乱雲の集団によるもので、天気界の『ONE TEAM』は非常に恐ろしいものなのです。
天気界の新語・流行語は『記録的○○』、『大雨警戒レベル』
個人的に、2019年の新語・流行語を考えてみたところ、2つの言葉が思い浮かびました。
ひとつが、『記録的○○』。
近年はわりとつかわれる言葉かもしれませんが、今年は特に耳にしましたし、僕もオンエアでけっこう使ったかなと思います。
『記録的大雨』は、大雨特別警報が出るようなレベルの大雨のときに使いました。
特に台風19号の時は、あちこちで平年の年間降水量の約4割の雨が1日くらいで降ってしまい、まさに記録的な大雨でした。
また、『記録的暴風』は台風15号が来たときにつかいました。
台風15号は千葉県の暴風や被害が特に取り上げられましたが、実は東京都心でも最大瞬間風速41.5m/sと、歴代2位の風速の記録になるほどの暴風が吹き荒れました。
もうひとつが、『大雨警戒レベル』。
2019年3月に「避難勧告等に関するガイドライン」(内閣府(防災担当))が改訂され、5段階の警戒レベルを明記して防災情報が提供されることとなりました。
その目的は、警戒のレベルを示すことで、自らの判断で直感的に避難行動をとれるようにすること。
レベル2の段階ではハザードマップ等で避難場所・避難経路を確認。
レベル3になったら、ご高齢の方など避難に時間がかかる方や、崖や川など危険な場所にお住まいの方は避難。
レベル4は、全員避難レベル。
おおざっぱに言うとこんな感じ。
一見レベル化することでわかりやすいようにも思えますが、課題はたくさんありました。
- レベル1とレベル5のどっちの方が危険なのかわからない。
- 情報が多くなりすぎて、かえって混乱した。※警戒レベルに加え、特別警報、警報、注意報、土砂災害警戒情報、記録的短時間大雨情報など様々な情報があるため。
- レベル4でも全員避難どころかごく少数しか避難しなかった。
なかなか難しいですが、一番大事なことは、自分の置かれた状況をしっかり把握して、自分や大切な人の命を第一に考えて行動することです。
平時からハザードマップ等で自分がどんな場所に住んでいるのか、避難場所はどこなのか、避難経路はどんな感じなのかを確認する。
また、ご高齢のご家族がいらっしゃるのであれば、避難に時間がかかることを考慮して、ご近所さんよりも早めに避難することを心がけてください。
周りに合わせず、勇気を持って早めに避難行動をとることが、命を守ることに繋がります。
『自分だけは大丈夫』と、絶対に思わないでください。
『ONE TEAM』の精神で命を守る
今回、『ONE TEAM』を記事にした理由。
それは、新語・流行語大賞に選ばれたから、という理由だけではありません。
『ONE TEAM』という言葉をつかわせていただくことにより、台風19号をはじめとする2019年の甚大な災害が、ラグビーワールドカップで日本が盛り上がった年だったというのを、セットで皆さんに覚えていただきたかったからです。
もちろん、いまの段階では多くの人が覚えています。
しかし、数年後、どうでしょう。
『あの大きな災害があった年っていつだったけ?』
『どんな被害があったんだっけ?』
僕は、台風19号への注意を呼びかける際に、『人生で1、2度程度しか経験しないレベル』という言葉をつかいました。
実際、そのレベルの台風だったと思いますし、ハード面もソフト面も対策が進んだ近年ではなかなか例を見ない甚大な被害が出てしまいました。
この甚大な災害が出てしまったことを、いかに多くの方々の記憶にとどめておいいただけるか考えた結果、皆さんの印象に強く残ったラグビーワールドカップとセットで覚えていただくのが一番いいのかなと思いました。
『ラグビーワールドカップの年の台風、かなり恐かったよね』と、多くの方に覚えておいていただければなと。
そして、災害の恐ろしさを、次の世代に伝えられる人が多く残ればいいなと思っています。
そうすれば、未来の災害から、きっと命を守ることができる。
そして、いざ災害が起きそうなときには、家族やご近所の方々と声を掛け合ってください。
『ONE TEAM』の精神で。