こんにちは!
気象予報士・お天気キャスターの小林正寿です。
お盆休みを直撃する可能性が高まっている台風10号ですが、サイズが『超大型』と、気象庁が定める大きさの中で、最も大きいランクとなりました。
きのう台風10号の特徴としてサイズが大きいことを挙げましたが、この超大型の台風10号がどのような影響をもたらすおそれがあるのか、最新情報を踏まえて解説します。
目次
『超大型』は本州すっぽりサイズ
冒頭にも書きましたように、台風10号は、12日(月)15時から、最高サイズの『超大型』となりました。
18時現在も、超大型を維持しています。
気象庁の定めでは、超大型とは、風速15メートル以上の強風域の直径(上の図の黄色い円)が、1600キロメートル以上のもの。
直径1600キロメートル以上とは、なんと、本州がすっぽり入ってしまうサイズ!
それだけ大きい台風であり、危険な雨雲の範囲、風の範囲が広い台風なんです。
台風接近前からの影響
きのうも書きましたが、台風のサイズが大きいということもあり、遠くにあるいまも、すでに影響が出始めています。
基本線は、きのうの記事から変わっていませんので、きのうの記事も参考になさってください。
きのうの記事↓↓↓
もう一度まとめると、
- 【大雨】紀伊半島南東側(三重県や奈良県)、四国山地南東側(徳島県や高知県)、九州山地東側(宮崎県や鹿児島県)で、台風接近前から雨が降り続き、雨量が増えるおそれ。
- 【高波】台風の影響は、『波に始まって波に終わる』と思っています。すでに、関東から西の太平洋側は、台風からのうねりが届き、波が高くなっています。海水浴は、海水浴場の指示に従い、安全にお過ごしください。個人的には、もうそろそろ控えた方がいいと思っています。
- 【猛暑】台風は熱帯生まれです。熱帯の空気が流れ込み、且つ、熱帯の空気が山を越えて吹き下りて、さらに熱がレベルアップするフェーン現象が起こる北陸など日本海側の地域は、40℃に迫る暑さとなる所もありそうです。台風対策をなさる際ですとか、お盆でお出かけの際には、熱中症にも厳重な警戒が必要です。
台風接近時の影響
今度は、台風10号が直撃したときにお起こり得ることについて、解説します。
【大雨・暴風は中心東側が特に危険】
台風が直撃すると、当然ですが、大雨や暴風となり、大荒れとなります。
そのなかでも特に危険な場所が、台風中心の東側(進行方向右側)にあたる地域です。
台風中心の東側は、台風の移動方向と台風自身の風向(台風中心に向かい反時計回りに吹き込む)が同じなため、より風が強く吹きます。
かつては、台風中心の西側(左側)は比較的船が航行しやすいことから『可航半円』、一方、東側(右側)は雨・風ともに強く危険であることから『危険半円』と呼ばれていました。
各交通機関にも影響が出ることも考えられますので、気象情報をこまめに確認しつつ、予定を早めるなどのご対応をよろしくお願いいたします。
【 高波+高潮 もこわい】
台風が近づいて暴風が吹き荒れれば、海上の波もますます高くなるわけですが、高波に加えて、今回の場合、高潮もこわいと思います。
高波は、その名の通り、波が高くなる現象。
高潮は、海面そのもの(潮位)が高くなる現象。
この高波と高潮の合わせ技のような感じで、沿岸部に被害をもたらすおそれがあります。
ではなぜ、今回、高潮もこわい状況になり得るのかというと、その理由は2つあります。
【高潮の原因①大潮の時期】
ひとつは、時期です。台風が接近・上陸するとみられる15日(木)は満月です。この満月の前後数日間は、大潮の時期にあたり、一日の中での潮位(潮の満ち引き)の変動が大きいのです。
つまり、大潮のこの時期の特に満潮の時間帯に台風が近づいてきてしまうと、高潮による被害が大きくなってしまうおそれがあります。
【高潮の原因②台風の勢力が強い状態で接近すること】
もうひとつは、台風の勢力が強い状態で接近することです。
高潮というのは、『吸い上げ効果』と『吹き寄せ効果』により発生します。
『吸い上げ効果』とは、気圧の低さにより、海面が上昇してしまう効果です。
ふだん、気圧が高いときというのは、海面が上から押さえつけられている状態なのですが、台風がきて気圧がさがると、上から押さえつける力が弱くなってしまい、上に吸い上げられるように海面が上昇してしまうのです。
海面上昇の効果は、1ヘクトパスカル下がると1センチ海面が上昇します。例えば、平時の気圧が1000ヘクトパスカルとして、台風が近づいてきて960ヘクトパスカルまで気圧がさがると、40センチも海面が上昇することになります。
そして、『吹き寄せ効果』とは、強い風により、海水が沿岸に吹き寄せる効果のことです。
個人的には、吸い上げ効果よりも吹き寄せ効果の方が大きいことのほうが多いと思っています。
また、そのほかに、高潮によって大きな被害が発生する要因として挙げられるのは、地形です。
去年の台風21号のときに、大阪湾で高潮による大きな被害が発生してしまいましたが、このときは、大阪で潮位3メートル29センチを観測し、過去最高潮位を記録しました。
大阪湾のように海から陸に向けてすぼまった湾では、海水が集まりやすく、潮位が上昇しやすいです。
今回、まだどのタイミングでどこに進むのか、細かなところはわかりませんが、発達した状態で近づくことは間違いなさそうなので、吸い上げ効果と吹き寄せ効果は西日本で大きくなりそう。
あとは『タイミング(満潮時刻と重なるか)』と『場所(地形)』がポイントになってきます。この2つがピッタリと条件に合ってしまうと、大きな被害が出てしまうことも考えられますので、近づいてきたら、自治体の指示に従うことが大事になってきます。
【大雨ならずとも塩害注意】
関東は、西日本に比べると、あまり雨は降らないと思っています。
ただ、沿岸部中心に風は強まりそうです。
そうすると心配なのが、『塩害』です。
塩害とは、海から塩が運ばれてきて、自動車がさびるなどの被害が発生するものです。
雨が降らず風だけ強いと、塩が洗い流されずに残ってしまい、その結果として、さびなどの被害が発生してしまいます。
去年の台風24号の際には、関東では内陸も含め広い範囲で塩害が発生しました。
このときは、台風の雨雲が過ぎ去っても強い風が吹き続け、その結果として内陸の地域でも塩害が発生したんです。
具体的には、植物が枯れる、塩が車にこびりついてしまったため、ガソリンスタンドの洗車が2時間待ちになるなどの被害が発生。
去年の秋を思い返すと、紅葉があまりきれいではなかった。。塩害のせいです。。
早めの備えを
きょうは台風10号の最新情報を解説しました。台風が近づく前から、そして、台風中心から離れた地域でも警戒が必要ですね。
きのうのブログの終盤にも書きましたが、天気が荒れていないうちに、早めに備えておきましょう。
きのうの記事↓↓