こんにちは。
気象予報士・お天気キャスターの小林正寿です。
さて、皆さん、天気予報でこんなフレーズをよく聞くのではないでしょうか?
『台風は温帯低気圧に変わりました』。
実際に、きょう23日(月)も、午前9時に台風17号が温帯低気圧に変わりました。
この記事では、台風から変わった温帯低気圧がもたらすことについて、解説していきます。
目次
『台風は温帯低気圧に変わりました』は安心情報ではない
まず、これだけは覚えておいていただきたいことがあります。
それは、『台風は温帯低気圧に変わりました』は、決して安心情報ではないということです。
「台風じゃないからもう安心」と思われがちなこの情報ですが、決して油断できません。
【 元台風は大雨を降らせる力十分 】
温帯低気圧と台風は、のちほど解説しますが、別物です。
ただ、別物といっても、温帯低気圧に変わったとたんに台風の性質が全くなくなってしまうわけではありません。
僕のこれまでの経験上、台風から温帯低気圧に変わるときはグラデーション的に変化するので、いきなり全くの別物になるわけではなく、元台風ですので大雨を降らせる力は十分あります。
実際に、きょう23日(月)も、台風から温帯低気圧に変わった午前9時以降も、温帯低気圧が近づいてきた北海道で活発な雨雲がかかり、総雨量100ミリ以上の大雨となっています。
これは、普段あまり大雨が降らない北海道としては、平年の9月1か月分の雨量の半分くらいの雨量に匹敵する所もあり、かなりの大雨です。
【温帯低気圧の再発達で強風範囲広がる 】
また、温帯低気圧に変わると、台風だったときよりもかえって強い風の範囲が広がってしまうことがあります。
あくまでイメージ的な話ですが、台風は強い風を吹かせるパワーが中心に近い所にギュッと凝縮しているイメージ、温帯低気圧は台風より中心付近の風は弱いものの、その分、風の強い範囲がボワッと広がるイメージです。
ギュッと凝縮されていたものが、ボワッと広がる。伝わりますかね。
さらに、温帯低気圧が再発達することもあり、そうなると、ますます強い風の範囲が広がってしまうんです。
下の天気図は、きょう23日(月)午後6時とあす24日(火)午前9時の天気図ですが、台風から変わった温帯低気圧が北日本を北東に進むことがわかります。
どちらも等圧線がグルグル巻きで、温帯低気圧が発達していますが、994hPaから988hPaとさらに発達する予想となっていて、強い風の範囲が今後広がる可能性があることを示唆しています。
台風と温帯低気圧の違いは『暖気集団チーム』か『暖気と寒気の混合チーム』か
では、台風と温帯低気圧の違いは何なのか。
それは、構成しているものの違いです。
構成とか難しい言葉を使わずに、もっと簡単な言葉で解説しましょう。
台風は『暖気集団チーム』、温帯低気圧は『暖気と寒気の混合チーム』です。
きょう23日(月)は、『暖気集団チーム』の台風が近づきましたので、特に東日本と西日本は最高気温30℃以上の所が多くなり、厳しい暑さとなりました。
新潟県や富山県、長野県では、熱風が山を越えてさらなる熱風となるフェーン現象も加わり、35℃以上の猛暑日になった所もありました。
ただ、あす24日(火)は、『暖気と寒気の混合チーム』温帯低気圧の影響で、北陸では大幅に気温が下がります。
新潟と金沢では、10℃もダウン。
体調を崩さないようにしてくださいね。
この気温が下がる理由をもうちょっと詳しくお話しすると、温帯低気圧の後ろ側に控える寒気が流れ込み、空気がガラッと入れ替わるからです。
下の図は上空の暖気と寒気を表したものです。
きょう23日(月)は台風が運んできた暖気に覆われている所が多いですが、あす24日(火)は涼しい空気がやってきて、日本海側を中心に空気がガラッと入れ替わることがわかると思います。
元台風はやはり危険
ここまで解説させていただいたように、台風から温帯低気圧に変わったからといって、決して安心できません。油断禁物です。
台風と温帯低気圧は別物ですが、台風から変わった温帯低気圧はまだ台風の性質も持っていて、危険な雨や風をもたらすことがあります。
むしろ、風の強い範囲が広がってしまうこともあります。
今回も色々と解説させていただきましたが、『 台風から温帯低気圧に変わっても油断しちゃいけないよ』ということだけは覚えておいてください。
台風から温帯低気圧に変わったとたんに、報道回数が減ってしまったり、解説の時間が減らされてしまいがちなのですが、これは僕らが元台風の温帯低気圧の危険さを視聴者のかたにもテレビ局内部のかたにも、よりわかりやすく解説することができれば改善されること。
まだまだ課題がたくさんですが、頑張ります!!